キミの誘惑、甘い罠─bitter─

４月⑮

常盤くんは常盤くんで、希望を持てたのが嬉しかったのか、上機嫌で最初に居た場所に戻って男子の中に再び混ざる。

あたしの方はといえば、「樹理亜羨ましすぎ！」なんてからかわれるし、「常盤くんに乗り換えちゃえ！」とまで言われて、苦笑いしか出てこない。

あたしは常盤くんとどうこうなりたいとか思ってないし、正直この先も可能性はゼロだと思っている。

常盤くんみたいな人に好かれて嬉しくないわけじゃないけど。

でも、あたしはやっぱり郁哉がいい。

今もこれから先も、彼氏でいて欲しいのは郁哉で。

常盤くんのことなんて考えられないし、常盤くんとどうこうなるとか絶対あり得ない。

だから、あたしはハッキリそれを常盤くんに伝えたいのに…。

いろんな感情がごちゃ混ぜになって、複雑な気分になってしまったあたしは、結局飲み会そのものを楽しむことができなかった。