4月⑯

3/8
前へ
/159ページ
次へ
「彼氏年下だって聞いてはいたけど、やっぱガキだな。」 伏し目がちにフッと笑った常盤くん。 「なんとでも言って下さい。」 言い返すわけでもなくそれだけ言った郁哉は、「樹理亜さん行こうか」と、あたしの腰を掴んだまま踵を返す。 「金沢またな。」 歩き出すと、常盤くんにそう声を掛けられたから チラリと振り返って「あ、うん。じゃあね」と返事をした。 郁哉は常盤くんに挨拶することなくそのまま歩き続ける。 横目でその郁哉を見ると、「ん?」と言って郁哉もあたしを見た。 その様子はいつもと変わらないように見える。 「郁哉、もしかして、結構待ってた?」 「ううん。9時半ちょっと前に着いたよ。店の近くまで来たら連絡しようと思ってたんだけど、樹理亜さんと常盤さんの姿見えたから。」 「そうだったんだ…。」 別にやましいことは何もないけど、常盤くんとのやり取りの一部始終見られてたの、なんだかやだな。 郁哉はどう思っただろう。 常盤くんに告白されたこと、話したら郁哉は何て言うだろう。
/159ページ

最初のコメントを投稿しよう!

63人が本棚に入れています
本棚に追加