4月⑯

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「樹理亜さん、警戒心なさ過ぎ。なんで常盤さんと2人きりになってんの?」 あたしの手を押さえたままそう言った郁哉は、とても不機嫌そうに見える。 「…そんなこと、言ったって…、」 常盤くんと2人きりになったのはたまたま。 しかも、声を掛けてきたのは常盤くんの方。 そんなの、郁哉なら言わなくても分かってるはずなのに、無茶苦茶なことを言うのは珍しい。 「今日は樹理亜さん送って行ったら帰ろうと思ったけど、やめた。」 「え…?」 「今日は帰らないし、帰さない。もう決めた。」 あたしから離れて運転席に座り直した郁哉は、勝手にこの後のことを決めて、エンジンをかけた。 「帰さないって…、どこ行くの?郁哉の家?」 「まさか。今日母さんいるし、帰らないって言ってんじゃん。」 「じゃあ、どこ行くの?」 「さぁ?どこだろうね?」 いまいち理解できていないあたしをクスッと笑った郁哉は、シートベルトを閉めて車を動かした。
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