4月⑰

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紗季さんと一緒に更衣室を出て、カウンター席に着く。 いつものようにパソコンを立ち上げて、始業前の準備をしていると、「おはようございます」と周囲に挨拶をして指導員デスクに来た人物の声に過剰に反応する。 聞こえてきたのは、常盤くんの声。 一昨日の告白のせいで、なんだか緊張する。   なるべく今まで通り、普通に。 そう自分に言い聞かせて手元を動かしていた時、「おはようございます」と、常盤くんがこちらに来て、紗季さんが振り返って「おはよう」と返事をしている。 あたしも挨拶しなければと、思っていた直後。 「金沢おはよ。」 常盤くんに先に声を掛けれられて、緊張が走る。 「あ…、おはよう。」 振り返って常盤くんの姿を確認すると、至って普通な様子。あたしの方は、なんだか変に緊張していて、マトモに常盤くんの顔が見れない。 「一昨日、悪かったな。彼氏の前で変なこと言って。」 「え、あ…あぁ…、ううん。全然大丈夫だから気にしないで。」 常盤くんが言ってるのは、多分郁哉が来た時のあのやり取りのことだろう。 あたしは何でもないけど、郁哉が気分を害したかもしれない。 それを含めての謝罪のような気がしたから、郁哉にも後でフォローしておこうと思った。
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