4月⑰

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「そうだと思ってたわ。」 ふふっと笑った紗季さん。 その様子は、こうなることを予言していたかのよう。 「いつから、そう思ってたんですか?」 「ん〜…面接に来たあの日から?」 「え…、面接来た日って、数年振りに常盤くんに再会した日ですけど…。」 「そう。あの時から多分、常盤くん金沢のこと気になってたんじゃない?金沢を見る目がそういう感じだったもん。」 「そう、なのかな…。」 言われてみればあの日、常盤くんに「いい女なった」って褒められた覚えがあるけど、あれはただの常盤くんの挨拶みたいなものだとばかり思っていた。 「実際、連絡先聞かれてたし、飲みに誘われてたじゃない。金沢に近付きたくて仕方がないって見え見えだったけど、気付かなかった?」 「常盤くんなら誰でもそうするのかなぁって思って気にもしませんでした…。」 「まぁ、金沢はそんな対象で常盤くんを見てなかっただろうしね。」 「そうなんです…。」 まさか、あの人気者の常盤くんがあたしを好きとか思いもしなかった。 「常盤くんみたいなタイプは諦め悪そうよね〜」 椅子を動かし、自分の持ち場に戻った紗季さんはクスクス笑う。
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