4月⑰

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常盤くんのことは意識しないようにしようとは、思うものの。 「金沢、ここ、いい?」 「あ、うん…。」 その日の昼休み。 休憩室でお昼ご飯を食べようとテーブルに着いた時。向かいの席に常盤くんがやって来た。 指導担当の矢野さんは別時間で休憩なのか、その姿がない。 向かいに座っても良いかと尋ねられて、断る理由はないからオッケーはしたけど、やっぱりちょっと緊張してしまったりして。 「金沢、弁当作ってきてんだ?」 あたしの向かいの席に腰をおろし、広げていたランチボックスを眺めて常盤くんが尋ねる。 「あ、うん。毎回ではないし、前の日の残りものと冷食ばかりで大それたものではないけど。」 「へぇ。偉いな。」 「全然偉くないよ。手の込んだものないし。」 「いやいや。自分でちゃんと弁当詰めてくるってところが感心するよ。」 「そう?」 「そうだよ。」 よかった。 わりと普通に話せる。 一度意識してしまうと、気まずくなってしまうからなるべく意識しないようにしたつもりだけど。 常盤くんが普通に話してくれるから逆によかったかもしれない。 そんな常盤くんは、目の前に置いたレジ袋からパンを3個取り出しそれを並べる。 「常盤くんは今日パン?」 ひとつひとつビニール袋に入れられたパン。 見た感じコンビニやスーパーの市販品ではなく、パン屋さんのパンぽい。 どこかのパン屋さんで買ってきたものだろうか。
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