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常盤くんの思っている通りのことが事実だし、答えを見付けてるのなら答えても答えなくても同じ。
それに、ここで働いているうちに、風の噂であたしと郁哉のことを耳にすることがあるかもしれない。
あたしの知らないところで知られるよりは、自ら伝えた方が気分的にもスッキリする。
だから、あたしは事実を常盤くんに伝えることを選んだ。
「そう、なんだ…。当時彼氏は高校生…?」
「…うん…。」
予想通りの答えのはずなのに、それでも常盤くんは驚きを隠せない様子で、綺麗なアーモンドアイが大きく見開いた。
常盤くんの反応は当然だと思う。
在学中の4つ下の高校生と…なんていう話を聞くと、やっぱり世間体が良くない気がする。
「それ、ここの人達みんな知ってんの?」
「矢野さんと紗季さんは、このこと知ってる。他の指導員の人達とかは…なんとなく耳にはしてるかもしれない。当時、彼結構目立ってたから…。」
「そっか…。イケメンだもんな。そんな感じするわ。」
「もう、ここの生徒じゃないけど、でも…口外しないで欲しくて…。」
常盤くんのことを信用してないとかそういうわけではないけれど、飛躍した変な噂が広まってこの自動車学校にも郁哉にも絶対迷惑は掛けたくない。
そこは分かって欲しいと思ったから、常盤くんに一応言っておこうと思った。
「言いふらすとかそういうのは絶対しないから安心して。そういうつもりで訊いたんじゃないし。」
「うん…。あたしも…、常盤くんのこと信用してないわけじゃないんだけど、でも一応…と思って…。」
「分かってる。」
「ありがと。」
「うん。」
誤解されたかなってちょっと不安になったけど、でも常盤くんを見れば全然そんな感じではなく、あたしを安心させるみたいにいつものように笑ってくれたから、ホッとした。
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