キミの誘惑、甘い罠─bitter─

５月①

あっという間に４月が終わり、世間はゴールデンウィークに突入した。

うちの自動車学校は、一般企業のように長い休暇があるわけではなく、休みは祝日の連休のみで、その後の土日は出勤日になっている。

郁哉は土日を含む５連休で、「連休中どこかに行こうか」と言ってくれ、５連休の最初の日をあたしとのデートに当ててくれた。

「ホントに映画で良かったの？遠出しても全然構わなかったのに。」

約束の時間10分前に、アパートに迎えに来てくれた郁哉。
郁哉の車に乗り、走り出してから早々にあたしに尋ねた。

「映画でいいの。郁哉と映画行ったことないし、今日観る映画、ずっと観たいと思ってたやつだから。」

郁哉にどこに行きたいかと尋ねられ、いろいろ考えた末、浮かんだのが映画だった。

ゴールデンウィーク中はどこも人出が多いだろうけど、行楽地よりは映画の方がいくらかマシかなと思い映画をチョイスした。

「まぁ、樹理亜さんがそう言うならいいんだけどね。」

ちらりとあたしを見てやんわり笑った郁哉。

こうしてデートするのは久々で、初デートみたいな感覚になってなんだかドキドキしてしまった。