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映画館のあるショッピングモールは、午前の早い時間にも関わらず、予想通り既に人が多かった。
郁哉が前もって座席をネットで取ってくれたから映画館に着いてすぐ発券し、その後飲み物を購入して場内へ入る。
座席は真ん中辺りがいいと言ったあたしの希望を聞いてくれた郁哉は、希望通りの場所を取ってくれていて、とてもスクリーンが見やすい場所だった。
こうして郁哉と2人で映画館で映画観るなんて初めてのことだから、とっても新鮮だ。
「あれ?末永くん?」
座席に座り、少しした後。
前列に入ってきたひとりの女の子が、こちらを見て郁哉の名前を口に出した。
白のオーバーサイズTシャツを着たストレートショートヘアのその女の子は、郁哉と同じくらいの年齢に見える。
「え、佐久間?」
声を掛けられた郁哉は、その女の子と知り合いのようで、郁哉もまたその女の子の名前を口に出す。
「こんな所で会うなんてびっくり〜!」
「ホント。学校外で会うと変な感じだな〜」
「だね。そうそう!末永くん土曜日の集まり、行く?」
「そのつもり。」
「じゃあ、土曜日また。」
「うん。」
郁哉と親しげに話す佐久間と呼ばれた女の子は、話が終わるとあたしの方を見て軽く頭を下げたから、あたしも会釈を返す。
そして、佐久間さんは一緒にいた友達を追うように、この位置から何席か離れたところの席に着く。
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