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「金沢って、このカウンターで男引き寄せるパワー発揮してるのかもね。」
「はい?」
あたしの隣でよく分からないことを言ってふふっと笑う紗季さん。
「末永くんともこのカウンターで出会ってるでしょ?さっきの彼…常盤くん、だっけ?その常盤くんともだし。」
「たまたまですよ、たまたま。」
「まぁ、そうだろうけど。彼も多分さ…、」
「〝多分〝…なんですか?」
チラリとあたしを見る紗季さんと目が合う。そんな紗季さんの次の言葉を待つものの、
「ううん。なんでもない。」
視線を先に逸らされて、紗季さんが言いかけた言葉の続きは聞くことができなかった。
「えー…、気になるんですけど。」
「気にしないで。ていうか、そのうち分かる時がくるだろうし。」
「なんですか、それ?」
「いいからいいから。」
結局、紗季さんの言いたいことがよく分からないまま会話が終わって。
この時のあたしは、紗季さんの言葉の意味も、これから訪れる波乱も、知る術もなかった。
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