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「…もしかして、佐久間との関係とか…、消防学校の女子との関係とか、心配?不安にさせた?」
「…え…、」
理由はないと否定したにも関わらず、郁哉は素直にそれを受け取らなかった。
それどころか、心の奥で思っていたことを指摘されて、心拍数が上がる。
あたしはそんなこと一言も口に出して言ってないし、態度にも出していなかったはずだ。
なのに、どうして郁哉には分かってしまうんだろう。
どうして伝わってしまうんだろう。
「佐久間も、他の女子も、ただの同期で仲間ってだけだよ。女子だから特別な感情持ってるとか、どうこうなりたいとか、そういうのは一切ないから。」
「……、」
「俺、身近に女子いても考えてるのはいつも樹理亜さんのことだけだし。」
「…そう、なんだ…。」
「うん。」
あたしの中にあるいろんなモヤモヤは、郁哉が言葉にして伝えてくれることで、みるみる薄れていくから本当に不思議だ。
「郁哉、本当はあたしの心の声聞こえてるでしょ。」
「いやいや。そんなことあるわけないじゃん。」
さっきまで真顔だった郁哉が、吹き出して笑った。
「さすがに心の声は聞こえないけど、でも俺は樹理亜さんのことならなんでも分かる体質なんだよ。」
「え、なにそれ?」
あたしのことなんでも分かる体質とか、どんな体質よ?
今度はあたしの方が吹き出してしまった。
「つまりさ、それだけ樹理亜さんに溺れてるってこと、かな。」
「…っ…、」
サラリとめちゃくちゃすごいこと言われたかも…と、思ったのとほぼ同時に、あたしは肩を抑えられてベッドに押し倒される。
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