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「ここまで言ってもまだ不安?」
あたしを見下ろしながら尋ねる郁哉のそれに、あたしは首を振る。
すると、郁哉は満足そうに微笑んだ。
その郁哉の顔に手を伸ばし、そっと頬に触れる。
「郁哉。」
「ん?」
「郁哉が言ったことはほぼ正解なんだけど、でもいちばん肝心なこと、郁哉は分かってないよ?」
「え…?」
あたしは起き上がって強引に郁哉の体勢を崩す。
「ちょっ、樹理亜さん!?なに!?」
今度はあたしが郁哉をベッドに押し倒し、手をついて郁哉の上に跨った。
「あたしはね、佐久間さんに会ったことも払拭させるくらい、郁哉の脳裏にあたしを残したいって思ったの。佐久間さんよりあたしが優位に立ってるって実感欲しくて、だから、あたしはどうしても郁哉の家に今日来たかった。」
「樹理亜さん…。」
「…重い女でしょ、あたし。」
──こんなの重すぎてドン引きされちゃう。
「そんなことないよ。寧ろ、俺的にはその重みがすげー嬉しいけど。」
こんなどうしようもない発言にも呆れず受け止めて優しく笑う郁哉は、どこまでもあたしを甘やかしてくれる。
だから、郁哉が欲しくて欲しくて堪らなくなる。
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