5月②

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「…わかっ、た…。」 この状況で電話とか無謀だし、どうかしてるとは思う。 でも郁哉がそれを望んでいるなら。 それで郁哉が満足するなら、あたしはそれに応える。 床に置いたスマホを手に取り、画面をタップして履歴を表示させ常盤くんの名前を確認してから、通話ボタンをタップしようとした時。 郁哉の手がぴたりと動きを止めて、その手があたしのスマホに移動した。 「…やっぱ、いい。」 あたしの手からスマホを取り上げた郁哉は、それを床に置いた後、あたしを抱き寄せた。 「ごめん。冗談。電話、しなくていいから。」 「え…?」 「常盤さんに見せつけるみたいなことしようと思ったけど、やっぱなし。こんな蕩けてエロい状態の樹理亜さんを常盤さんに知られるの、無理。」 「や、姿は見えないし、電話するだけなら別に…、」 「俺以外のヤツにこんな樹理亜さん知られるの絶対嫌だ。」 「ホントにいいの?」 「うん。いい。」 背中に回された腕にぎゅっと力が込められたから、あたしも負けずに郁哉をぎゅっと抱き締める。 「…おかしなこと言い出して軽蔑した?」 「してないよ。」 「やばいな、俺。」 「そんなことない。」 「なんかもう、嫉妬でおかしくなりそう。」 あたしはこんなに郁哉が愛しくて愛しくてたまらないのに、ほんの一部しか郁哉には伝わってない気がする。 どんな言葉を使ったら、あたしの想いの全てを伝えられるのだろう。
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