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「…わかっ、た…。」
この状況で電話とか無謀だし、どうかしてるとは思う。
でも郁哉がそれを望んでいるなら。
それで郁哉が満足するなら、あたしはそれに応える。
床に置いたスマホを手に取り、画面をタップして履歴を表示させ常盤くんの名前を確認してから、通話ボタンをタップしようとした時。
郁哉の手がぴたりと動きを止めて、その手があたしのスマホに移動した。
「…やっぱ、いい。」
あたしの手からスマホを取り上げた郁哉は、それを床に置いた後、あたしを抱き寄せた。
「ごめん。冗談。電話、しなくていいから。」
「え…?」
「常盤さんに見せつけるみたいなことしようと思ったけど、やっぱなし。こんな蕩けてエロい状態の樹理亜さんを常盤さんに知られるの、無理。」
「や、姿は見えないし、電話するだけなら別に…、」
「俺以外のヤツにこんな樹理亜さん知られるの絶対嫌だ。」
「ホントにいいの?」
「うん。いい。」
背中に回された腕にぎゅっと力が込められたから、あたしも負けずに郁哉をぎゅっと抱き締める。
「…おかしなこと言い出して軽蔑した?」
「してないよ。」
「やばいな、俺。」
「そんなことない。」
「なんかもう、嫉妬でおかしくなりそう。」
あたしはこんなに郁哉が愛しくて愛しくてたまらないのに、ほんの一部しか郁哉には伝わってない気がする。
どんな言葉を使ったら、あたしの想いの全てを伝えられるのだろう。
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