155人が本棚に入れています
本棚に追加
朝食後、郁哉はのんびりしていっていいよと言ってくれたけど、お母さんの帰宅前に帰りたいと話した。
お母さんが帰ってくるのを知っていながらも、図々しく長居するのは、やっぱり申し訳ない気がしたから。
郁哉はあたしの気持ちを察してくれたようで、9時頃に送って行くと言ってくれ、ホッとした。
帰りは郁哉の車で送ってもらうわけだけれど、郁哉の家からあたしのアパートまで送ってもらうというのは今までほぼなかったから、帰りはなんだか不思議な気分だった。
セフレだった頃はこんな光景考えられなかった。
数ヶ月前のことを思い出しながら、郁哉の横顔を見ていると視線に気付いたのか、運転中にも関わらず、郁哉は「ん?」とこちらを見る。
「帰るの嫌だな〜って思って。」
「帰るって言ったの、樹理亜さんじゃん?」
「そうなんだけどね。」
あっという間にアパート前に到着して、駐車場に車を駐める。
「本当は、俺も帰したくないところだけど、予定あってさ。」
「うん。分かってる。」
今日は友達と会う約束をしていると聞いているし、土曜日は消防学校の仲間と集まることも聞いた。
週末や祝日だけしか帰って来られない郁哉にとって、この連休は自由を満喫できる貴重な時間だ。
最初のコメントを投稿しよう!