157人が本棚に入れています
本棚に追加
「隼人が『結婚式も新婚旅行もないからこれだけは買わせてくれ』って言って、くれたんだけどね。」
「さすが矢野さん。太っ腹。」
「太っ腹も何も、あたしは要らないって言ったのよ?これからいろんなことにお金かかるのに、婚約指輪にお金掛ける余裕あるなら、他にまわしたいって。」
「えー…、いいじゃないですか。」
「そう?半ば強引にジュエリーショップ連れて行かれて結婚指輪も一緒にオーダーして、こっちはビックリよ。」
「ふふ。矢野さんらしいですね。」
予期せぬ紗季さんの妊娠と結婚だっただろうけど、ある程度紗季さんとの将来を描いていた矢野さんのことだ。将来のために貯金していたに違いない。
だからこそ、婚約指輪にもお金を出せたのだと思う。
「隼人ってば強引だから、結局なんだかんだであたしも流されちゃったんだけど。」
「でも、そういう矢野さんの強引なところも実は紗季さん好きですよね?」
「…まぁ、ね。」
文句を言いつつも、少し照れ臭そうに頷いた紗季さんは、なんだかかわいらしい。本当に矢野さんのことが好きなんだと伝わる。
そして、何よりも幸せそうでこっちも嬉しくなった。
「なんか、いいですね。」
「え、何が?」
「婚約指輪とか憧れっていうか。いいなぁって。」
「なに言ってんの〜金沢はまだ22なんだし、これからこれから。」
「そうかもしれないんですけど…。」
この先、婚約指輪とかもらえる時がくるのかな?とかふと思ったりして。
郁哉とは将来の約束みたいな話をしたことがあったけど、この先どうなるか分からない。
最初のコメントを投稿しよう!