157人が本棚に入れています
本棚に追加
食後に頼んでいたデザートのチーズケーキを食べ終え、お腹いっぱいになった頃。
何気なく入り口前のレジのところに目をやると、3人組の女性が会計をしている姿が視界に入った。
「え、うそ。」
思わず声に出してしまったのは、視界に入った女性が見覚えのある人物だったから。
「どうしたの?知り合いでもいた?」
あたしの様子にすぐ気付いた紗季さんは、振り返ってあたしの視線の先を追う。
その人物は一度しか会ったことがないけれど、間違いない。
黒髪のショートボブヘア。
ブルーのストライプブラウスにワイドジーンズを履いていてスタイルが良く、綺麗な人。
「…今レジ前にいる人…、郁哉のお母さんなんです…。」
「え!?そうなの!?声掛けに行く?」
「…いえ…、いいです…。」
紗季さんの問い掛けにあたしは首を振った。
郁哉のお母さんは、あたしに気付いていない。
幸いだ。気付かなくていい。
声を掛けられても緊張してしまって、うまく会話出来る自信がないから。
郁哉のお母さんと一緒にいる2人のうち、ひとりは郁哉のお母さんと同じくらいの年齢ぽく、ロングヘアで小柄な女性だ。
そして。その小柄な女性の隣にピッタリくっついているもうひとりも、あたしは知っている。
「一緒にいるのは末永くんのお母さんの友達とかかな?」
「多分…。」
会計を済ませた様子の3人は、何やら楽しげに話しながら店内を出て行った。
あたしと紗季さんはその姿を見送りながら、会話を続ける。
最初のコメントを投稿しよう!