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「もうひとりの若い子は…?」
「…あの子…、郁哉の消防学校の同期生らしいです…。」
抱いた紗季さんの疑問に、あたしはすぐ様答えると、紗季さんは「え!?」と、更に驚く。
そう。
郁哉のお母さんと一緒にいたもうひとりの人物は、一昨日映画館で会った佐久間さんだ。
一昨日会ったばかりだし、とても消防士には見えないビジュアルのかわいい子だったから、その姿は忘れない。
「末永くんの同期生!?ていうか、なんでそんなこと金沢知ってるの?」
「一昨日…、郁哉と一緒にいる時に偶然彼女に会いました…。それで、同期生だったって聞いて。」
「そうなんだ…。でも、なんで末永くんのお母さんと一緒にいるのかしらね?」
「分かりません…。」
あの3人がどういう関係なのかは分からないけれど、佐久間さんが郁哉のお母さんと仲良く食事できるような間柄である事実が、あたしをモヤつかせた。
あたしは、郁哉のお母さんに一度しか会ったことがない。食事なんてしたこともないし、偶然会ったら気軽に挨拶出来る自信もない。
だから、郁哉のお母さんと一緒にいた佐久間さんにとてつもない嫉妬心を抱いてしまった。
そんなあたしの様子を紗季さんは察したようで、「あとで末永くんに訊いてみなよ」と、言ってくれた。
そうだ。
郁哉のお母さんのことなら、郁哉に訊けば分かる。
何も知らない、分からないこの状況下でひとりモヤモヤしていても仕方がない。
後で郁哉に連絡して訊いてみよう。それがいちばんいい。
不安になることなんて、何ひとつないはずだ。
あたしはそう言い聞かせることでしか、この言い様のない感情を解消する方法が分からなかった。
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