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「…もしもし。」
『出るの早いね。』
ほんの数秒で応答したら、スピーカー越しの郁哉にクスクス笑われて。
早く郁哉の声が聞きたかったからなんて、照れ臭くて言えないから「画面触ってたから」と、答えてみる。
『何してた?』
「さっきまで晩御飯食べてたよ。」
『何食べたの?』
「お惣菜の春巻きと青椒肉絲と春雨サラダ。」
『お。中華系だね。美味そう。』
「うん。美味しかったよ。紗季さんと買い物したついでに、お惣菜屋さんに行って買ったやつなんだけど。ね。」
『へぇ。』
「郁哉は?ご飯、食べた?」
『食べたよ。』
「家で?」
『うん。今日、母さん休みだからね。』
「…そっか…。」
お母さんの話が出て、一瞬ドキリとしてしまった。
話を聞く限りでは、お母さんが作った晩御飯を食べたと思う。
郁哉はお母さんが今日、佐久間さんと食事したことを聞いているだろうか。
郁哉に訊きたいけれど、なんとなくその話題を言い出せなくて、喉元まで出かかる言葉を呑み込む。
『ホントはビデオ通話にしようかと思ったんだけど。』
「あたしはどっちでもいいよ?」
一昨日会ったばかりだし、消防学校に戻る前なら会おうと思えば会える。
ビデオ通話に拘る必要はない気がする。
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