5月④

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『ビデオ通話で顔合わせると、会いたくなるからだめな気がして。』 「それじゃあビデオ通話なんてやれないんじゃない?」 その妙な理由に思わず笑ってしまった。 『うん。だから、ビデオ通話とかまどろっこしいのはやめることにした。』 「そっか。」 『そういうわけで、会いに行っていい?』 「え、これから?」 『そう。これから。だめ?』 「だめじゃないけど、今からだと面倒じゃない?」 チラリと時計を見れば、7時55分。 家にいる郁哉が今からあたしのアパートに来るとしたら、8時半頃になるだろう。 もちろん、郁哉には会いたいし、来てくれるのはすごく嬉しいけど。 『面倒じゃないよ。つーか、もう来てるしね。』 「へ?」 スピーカー越しに、車のバック音が聞こえる。 『着いたよ。樹理亜さんのアパート。』 「うそ。」 『嘘じゃないから。ドア、開けてみればいい。』 「ホントに?」 『ホントだってば。』 半信半疑で玄関に向かい、ドアを開けてみる。 ドアを開けた先。 そこには本当に郁哉の姿があって。 「だから言ったじゃん。」 その声は、スピーカー越しのものではなくて、目の前にいる郁哉が喋っている声。 そして、得意げに笑ってみせるその顔に、胸がキュッとなる。 ──あぁ。もう。そういうところ、ほんとに好き。
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