4月③

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「なーんか、樹理亜雰囲気変わったね。」 「え…?」 部屋に入ってから、テーブル前に腰を下ろしアイスティー入りのグラスを目の前に置く。 そして、あたしの姿をマジマジと見た美久の第一声がそれだった。 そういえば、昨日常盤くんにも全く同じこと言われたな…。 「あ、誤解しないでね。悪い意味じゃなくて、良い意味で変わったってことだから。」 「具体的にどんなふうに変わった?」 常盤くんには「いい女になった」なんて、言われたけど。常盤くんが言ういい女の定義が分からないし、雰囲気が変わったと言われても自分では分からない。 「なんていうか、かわいさと色気が混じった感じ?」 「やだ。めちゃくちゃあたし褒められてる?」 「褒めてる褒めてる。」 「ホントに〜?なんか、あたし常盤くんにもいい女になったって言われたんだけど。」 冗談混じりでケラケラ笑いながら常盤くんとのやり取りを思い出し美久にそう話すと、アイスティーの入ったグラスに口を付けた美久の動きが止まった。 「ていうか、常盤くんといつの間にそんな仲になったの?」 美久はグラスをテーブルに戻し、不思議そうに首を傾げる。 「そんな仲も何も、うちの職場に面接来て連絡先教えてって言われて、教えただけだし。」 「そうなんだ…。常盤くんから樹理亜を誘ってるって聞いたから仲良くしてるのかと思ったけど、そういうわけじゃないんだね。」 「そういうのじゃないよ全然。」 「ふーん…。」 イマイチ腑に落ちていない様子の美久は、アイスティーのグラスに再び口を付けて何か考えているようだった。
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