4月④

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グレイシアに着くと、駐車場には車がたくさん駐められており、窓から見える店内もほぼほぼ席が埋まっていた。 タイミングよく出た車の後に駐車することができ、店内に入ると多くのお客さんで賑わっている。 出迎えてくれたホールスタッフの谷内さんに空いている席に案内してもらい、そこに座った。 「末永くん、少し見ない間になんだか大人になった気がする。」 席についてからお水を持ってきてくれた谷内さんが、にこにこしながら郁哉に話し掛ける。 「えーそうですか?」 「うん。なんか、社会人の顔って感じ?」 「消防学校の生活で一気に老けたかな〜?」 「頑張ってるんだね。それに、彼女ともうまくいってるみたいだし。」   そう言ってあたしに視線を移動させた谷内さんは、目が合うならにっこり微笑んでくれる。 「はい。おかげさまで。」 「そっか。あ、もしよかったら、オーナーと真帆さんにも声掛けていって。」 「そうですね。とりあえず挨拶だけしてこようかな。」 郁哉は「すぐ戻ってくるから食べるもの選んでて」と言って、立ち上がり谷内さんと一緒に厨房の方へと向かった。 あたしはその後ろ姿を見送った後、メニュー表を取って広げる。 オムライスを食べる気で来たけど、春限定メニューと書かれたパスタの写真を見たらパスタも気になりだし、どうしようかな…なんて思っていた時だった。 「あれ?金沢…?」 聞き覚えのある声で名前を呼ばれ、すぐさま顔を上げその姿を確認する。
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