4月④

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「まさか。そんなことないよ。」 「そんなことあるんだよ。つーかさ、常盤さんって友達?」 「高校の同級生。友達って言えるほど仲良かったわけでもないよ。卒業してから会ったこともなかったし。水曜日にうちの自動車学校の指導員の面接に来てそれで再会したの。」 「面接って…、じゃあ受かったら樹理亜さんとこの自動車学校の指導員になるってこと?」 「そういうことになるね。」 「…なんか、厄介だな…。」 「厄介?」 「や、なんでもない。それより食べるもの、決めようか。」 「あ、うん。」 常盤くんとは疾しいことなど一切ないし、訊かれたら全部答えるつもりでいたけど、郁哉はそれ以上常盤くんの話をしようとしなかったから、あたしも敢えて触れなかった。 だから、常盤くんの話題はこの場で終わるものだとばかり思っていた。 実際、食事中も常盤くんの話題はなかったし、気にしている様子もなかったから、飲み会の話なんかもする必要ないかなも…なんて、思っていた。 だけど。 そう思っていたのはどうやらあたしだけだったらしい。
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