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「なんか、悔しい。」
「え?」
郁哉がペットボトルにキャップをして、それをテーブルに置き、あたしの呟いた一言に首を傾げた直後。
「え!?ちょっ、」
あたしは郁哉に接近して勢いよく覆い被さり、その場に押し倒した。
「樹理亜さん!?なにしてんの!?」
「郁哉はいつも余裕だよね。」
「は?」
「年下なのにいつもあたしより余裕あるから悔しいの。」
郁哉の身体に馬乗りになって跨り見下ろしながら交わす会話。
郁哉はこの状況を理解できずにいるのか、キョトンとしている。
「だから、たまにその余裕そうな郁哉を壊して優位に立ちたくなる。」
じっとあたしを見る茶色が多めな郁哉の瞳は、本当に綺麗で吸い込まれそう。
その瞳に見つめられながらあたしは郁哉の頬を両手で触れ、顔を近付けてそのまま郁哉の唇に自分の唇を重ねた。
触れるだけの数秒の口付けを、郁哉はただ受け入れるだけで応えようとはしない。
それは多分、あたしのしたいようにさせるための郁哉の配慮。
ゆっくりと唇を離し、閉じていた瞼を持ち上げればほぼ同じタイミングで目を開いた郁哉と目が合う。
「樹理亜さん、なんか勘違いしてる。」
身体を起こした直後、郁哉は切なそうな表情であたしを見つめて言葉を紡いだ。
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