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「大丈夫。頃合いみて帰るから。」
「そ、う?」
「うん。ちゃんと体調管理出来てるし、樹理亜さんはなんにも心配しなくていいよ。」
「…そっか。」
そんなふうに言われたら、もう何も言えないよね。
あたしがどうこう言わなくても、いろいろ考えてやるべきことをちゃんとやっている。
ちょっと前まで高校生だったなんて思えないくらいしっかりしている18歳。感心してしまう。
「樹理亜さん。」
向かいにいる郁哉は、最後の一口になったケーキを口に運んだ後、フォークをお皿の上に置いてあたしを呼ぶ。
ほぼ同じタイミングでケーキを食べ終えたあたしは「なに?」と返事をする。
「こっち来て。」
「え…?」
にこにこしながら自分のところに来てと言う彼の意図がよく分からず、思わず首を傾げた。
「だから、こっち。ここ、来て。」
床に手を着いてぽんぽんと、自分の左側をアピールする。
「う、ん…。」
え?なんでそっちに行くの?
なんて、思いながらも郁哉が指示したその場所に移動する。
そして、郁哉の左隣に腰を下ろしてすぐ。
「!?」
あたしの身体は後ろから郁哉の脚に挟まれ、ぎゅっと抱き締められる。
一瞬で、身体中に熱が走る。
急激に胸の鼓動が早くなる。
「今日最後の充電。」
そう言って、郁哉はあたしの肩に顔を埋めた。
あたしはそれに応えるように、まわされた腕に手を添える。
こんな密着状態は何度となく経験していけれど、彼の吐息が首や耳にかかって胸の音がうるさく騒ぐ。
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