63人が本棚に入れています
本棚に追加
「家まで送る。」
立ち上がった紗季さんの腕を掴んだ矢野さん。
「なに、言ってんの。矢野さん、午後イチ教習入ってるし。」
「教習担当なら代わってもらえる。」
「そういう問題じゃない。」
「お前が心配なんだって。」
「みんな怪しむでしょ。ひとりで帰れる。大丈夫。」
「門間…、」
「本当に、大丈夫だから。」
紗季さんは、自分の腕を掴んでいた矢野さんの手を解く。
「矢野さん。あたし…矢野さんのそのタバコの匂い、具合悪くなるから…タバコ吸った後とかなるべく寄らないで。」
「……、」
「校長に早退するって言って来るから。金沢、あとはお願いね。」
矢野さんの方を全く見ようとせず、あたしにだけ視線を向けてそう言った紗季さん。
「わかりました。ゆっくり休んで下さい…。」
そして、「じゃあ」と言って、紗季さんは休憩室を後にした。
「…なん、だよ。くっそ。」
紗季さんが休憩室を出て行った後。
チッと舌打ちをして頭をワシャワシャと掻き、ものすごく不機嫌な顔で矢野さんはドカッと椅子に腰を下ろす。
矢野さんのこんな姿、初めて見たかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!