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「週末しか樹理亜さんに会えないとか、俺耐えられるかな。」
「耐えるしかないでしょ?」
「樹理亜さんは平気なの?」
「…平気じゃ、ない。」
平気なわけがない。
多い時は週3で会っていたこともあったから、週末しか会えない一択になると、やっぱり気持ちが全然違う。
しかも、会いたい時に会えない状況が6ヶ月間続くわけだから、遠距離恋愛に似たような状況。
「会いたい」と言えば、「じゃあ会おうか」とすぐ言ってくれていたそれが叶わなくなることに不安を覚える。
「なんかもう、帰るの嫌になってきた。」
「あたしも…帰すの嫌になってきた。」
「うーわ。樹理亜さんにそういうこと言われたら、ますます帰りたくなくなるし、襲いたくなるじゃん?」
「でもだめだよ。帰らないと。」
「うん…。わかってる。」
頬に顔をより寄せてくる郁哉の頭をあたしはそっと撫でる。
彼はそれに応えるかのように、ぎゅっと腕に力を込めたあたしを抱き締めた。
「腕時計、ありがとね。大事にする。」
「うん。」
郁哉は、自分の左腕をあたしの視界に入るように動かした。
その左腕には、あたしが誕生日プレゼントとして贈った腕時計が付いている。
購入した腕時計はペアウォッチで、あたしもレディースバージョンを持っている。
プレゼントのリクエストは敢えて聞かずに買った腕時計だったけど、彼はちょうど仕事でも使える腕時計が欲しかったと、とても喜んでくれ、さっそく付けてくれた。そして、あたしとペアの物だと伝えたら更にもっと喜んでくれた。
「週末まで会えないけど、メッセージ毎日送るから。」
「うん。」
「電話も、可能な限りする。」
「うん。待ってる。」
「俺のいない間、他の男によそ見しないでね。」
「しないよ。するわけないじゃない。」
あたしはもう、他の男なんて目に入らない。郁哉しか見てない。
郁哉が思ってる以上に、あたしは郁哉が好きだと思う。
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