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「金沢はさ、」
「はい。」
「紗季の立場だったらどう思う?」
「もし、妊娠したら…ってことですよね?」
「あぁ。末永とそういうことになったら、お前はどうする?」
もし今、郁哉との赤ちゃんを妊娠してしまったら。
「あたしは…産みたいですね。」
あたしの返答を聞いて、ずっと落としていた矢野さんの視線が持ち上がる。
「大好きな人との赤ちゃんだから産みたいです。矢野さんみたいに、子供産んで欲しい、結婚してくれって言われたらイエスの返事一択しかないですよ。」
「…だよな〜普通はそう思うよな。なのに、なんでアイツは…。」
天井を仰ぎ顔面を覆いながら矢野さんは再び大きな溜め息を吐く。
「矢野さん、あくまであたしの場合は…って話ですよ?世の中、紗季さんみたいに思う人たくさんいるかもしれないです。」
「…かもな。」
矢野さんは、体勢を戻して缶コーヒを一口飲む。
「なんつーか。やることちゃんとやってなかった俺も悪いけどさ、例え俺はこういうことになっても紗季となら…って思ってたから、俺の中ではなんの問題もないんだよ。紗季も俺と同じだと思ってた。」
「でも、違った、んですよね。」
「あぁ。俺は結婚して子供育てる気でいんのに、子供は堕ろす、結婚はしないとか言われて。別れたいのかって訊いたら、そうじゃないって言うし。なんかもう、わけわかんねぇし、どうしたらいいかもわかんねぇんだわ。」
「……、」
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