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「俺はどうすりゃいいんだ…。」
矢野さんはまた大きな溜め息を吐き、コーヒーを口に含む。
あたしに訊いているのか、それとも独り言なのか。
いずれにせよ、普段こんなふうにあたしに愚痴を溢すことのない人がそんなふうに言うのだから余程まいっているのだと思う。
「紗季さんの中で何がいちばんネックなのか、もう一度話聞いた方がいいかもしれませんね。あたしや矢野さんが聞いてる理由以外にも、何か引っ掛っていることがあるかもしれません。」
なんとなくだけど、産みたくない理由と結婚したくない理由が、紗季さんの中で他にもあるような気がして。
だって、紗季さんと矢野さんは本当に仲が良くて、一緒にいて幸せそうだから。
「どうだかな。俺にはホントもうわかんねぇよ。」
「あたしからももう少し話訊いてみますね。」
「…あぁ。頼む。」
力なく笑って答えた矢野さんは、缶コーヒーを飲み切り「コーヒーご馳走さん」と、言って立ち上がり、休憩室を出て行った。
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