4月⑧

1/9
前へ
/159ページ
次へ

4月⑧

「金沢さん。」 水曜日の午前中。 この自動車学校のもうひとりの事務である松本さんが、あたしの席にやって来る。   「先日面接に来た人の採用通知の送付と今後の手続きとかお願いしてもいい?通知の記載内容書いたものの付箋つけてるから。」   そう言って松本さんは透明クリアファイルに入った履歴書をあたしの目の前に置いた。 「分かりました。採用通知は今日中に送付しますね。」 先日来た面接者とはひとりしかいない。 確認のためチラリと置かれた履歴書に視線を移動させれば、やはり「常盤流星」の名前と見覚えのある顔写真が目に入った。 どうやら常盤くんは、予想通り指導員として採用されることになったらしい。 「ありがとう。じゃあ、お願いね」と、言って松本さんは自分の席に戻って行った。 机の上に置かれた常盤くんの履歴書を早速見てみる。 写真はわりと最近撮られたものと思われる風貌で、当然ながら写真写りも抜群に良い。 常盤くんは確か高校在学中、就職グループで運送会社の内定をもらってそこに就職したはず。 職歴を見ると、やはり前の職場はその運送会社だった。 大型免許、大型特殊免許、けん引免許も持っているようで資格の欄は運送会社に必要な免許がほぼ記載されていた。
/159ページ

最初のコメントを投稿しよう!

63人が本棚に入れています
本棚に追加