キミの誘惑、甘い罠─bitter─

４月⑧

あたしの仕事は、主にこの自動車学校の受付がメインだけれど、こういう事務処理の仕事もやっている。

採用通知送付なんかの仕事は、わりと松本さんが処理することが多いのだけれど、松本さんが忙しい時はあたしや紗季さんのどちらかが引き受けていた。

そして、今日は紗季さんが公休の日で、受付はあたしひとりで仕切っている。

多忙期じゃない上に今日は特に人が少なくてあたし的にはこの状況は楽だし、助かっていた。

ただ。仕事に余裕があると、郁哉のことばかり考えてしまう。

寝る前に郁哉に送ったメッセージを確認したけれど、既読は付いておらず、それならば朝に見るのかなと思って確認したけれど、やっぱり付いていなかった。

そうなると気になって仕方なく、隙間時間に机の隅に置いているスマホに手を伸ばし、メッセージの有無を確認していた。

──昼休みになったらメッセージくるかな。

モヤモヤしつつもそんな期待を抱きながら、手に取ったスマホを伏せて、あたしは常盤くんの採用通知の作成に取り掛かった。