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「俺的には学校のことより、樹理亜さんに悪い虫が付くんじゃないかってことの方が心配でおかしくなりそう。」
はぁーっと深い溜め息をついた後。再びぎゅっと郁哉の腕に力が籠る。
悪い虫なんてそんなの、あたしに付くわけがない。
郁哉は買い被りすぎだし、心配性過ぎる。
でも、そんなふうに思ってくれてるのはすごく嬉しいけど。
「郁哉。」
「ん?」
あたしは郁哉の腕を寄せて、くるりと身体の向きを変えて郁哉と向かい合う。
そして、郁哉の頬に両手を伸ばし触れた。
「あたしは、いつだって郁哉だけしか見てないから大丈夫。心配しないで。」
「樹理亜さん…。」
あたしの両手に自分の手を重ねた郁哉は、その綺麗な瞳であたしをじっと見つめる。
「お父さんみたいな、立派な消防士になるんでしょ?」
「うん。なるよ。」
「学校、頑張ってきて。」
「うん。頑張ってくんね。」
郁哉はふっと笑って顔を緩ませる。
その笑った顔がたまらなく好き。
いつもあたしのことをいちばんに考えて、包んでくれる郁哉が好き。
陰ではたくさん努力をしているはずなのに、決してそれを語らず、信念貫いて真っ直ぐ頑張る郁哉が好き。
他の男になんか絶対行かないから心配しないで。
そんなことを思いながら、あたしは郁哉の唇を塞いだ。
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