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そして、あたしは紗季さんと連絡を取るべく、メッセージを作成する。
【具合はどうですか?】
【紗季さんさえよければ、会いに行ってもいいですか?】
2通のメッセージを続けて送信すると、すぐに既読が付く。
そして、返信すぐきた。
【今日は体調いいよ】
【私も金沢と話したいから待ってるね】
かわいいキャラクターのスタンプも一緒に送られてきたその返信を見て、ホッとした。
仕事が終わったらスーパーに寄って、何か差し入れを買おう。
紗季さんに食べたいものを訊くのがいちばんいいけど、遠慮しそうだし、さっぱりした果物とかゼリーが無難かな。
そんなことを思いながら、悪阻期の食べ物についてスマホで検索していると、矢野さんが休憩室に入って来た。
「矢野さんお疲れ様です。」
「お疲れ。」
あたしの向かいに座った矢野さんは、喫煙所から戻ってきたばかりなのか、微かにタバコの臭いがする。
矢野さんは、手に持っていた缶コーヒーを開栓して一口飲んだ後、スーツのポケットからスマホを取り出しそれを眺める。
「矢野さん、その後紗季さんと話できました?」
「いや。メッセージで体調のこととか聞いたぐらいで何も。」
スマホを眺めながら小さく溜め息をつく矢野さんは、一昨日話した時とは違い、まるで全てを諦めたかのような様子だ。
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