4月⑧

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「あたし、今日紗季さんに会いに行くんですけど、矢野さんも一緒に行きません?」 「俺はいいよ。邪険にされるだけな気するし。」 「そんなことないと思います。」 「女同士で話したいこともあるだろ。俺のことは気にすんな。」 力無く笑ってそう言う矢野さんを見ていたら、なんだか切なくなる。 だけど、気の利いた言葉は出てこなくてあたしは「わかりました」としか答えられなかった。 「金沢。」 「なんですか?」   途切れた会話を再開させたのは矢野さんの方。   スマホに落としていた視線を持ち上げれば、矢野さんもスマホを伏せてあたしを見る。 「紗季に…、俺の気持ちは変わらないからもう一度考え直してくれって、伝えてもらえるか?」 「…はい。伝えておきます。」 「頼む。」 矢野さんは諦めてなんかいなかった。 紗季さんの考えが変わることを願っているだけで、決して諦めたわけではなかった。 ──矢野さんの想い、紗季さんにちゃんと伝えなければ。  
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