4月⑧

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仕事が終わってからスーパーに寄って、キウイやイチゴなんかのフルーツと、ゼリー、炭酸飲料を少し買って紗季さんのアパートに向かった。 「金沢、わざわざありがと。」 アパートに着き、出迎えてくれた紗季さんは一昨日より顔色は悪くなさそうだけど、少し頬がこけたように見えた。 差し入れを渡すと、「気遣わせてごめんね」と受け取ってくれた。 「具合大丈夫ですか?」 「うん。今日は落ち着いてる。」 「よかった。」 部屋の中に通されて、テーブル前に紗季さんと向かい合って座る。 「矢野さんに一緒に行きませんかって声掛けたんですけど、断られちゃいました。」 「…そっか…。」 力なく笑った紗季さんのその様子から、いろいろ思い悩んでるのがわかる。 だからこそ、矢野さんの想いちゃんと伝えないと。 「その矢野さんから紗季さんに伝言預かってて。」 「うん。」 「俺の気持ちは変わらないから、もう一度考え直してくれって。」 「……、」 「紗季さんの気持ち分かります…。いろんなこと変化することとか、子供育てることとか、不安ですよね。でも、矢野さんがきっと支えてくれると思います。」 「……、」 「矢野さんとの結婚と出産、考えられないですか?」 「……、」 何を言っても視線を落としたまま無言の紗季さん。 紗季さんと矢野さんの2人の問題なのに、立ち入ったこと言い過ぎて不快にさせてしまったかな…とか不安になり始める。 でも、2人には幸せになって欲しいし、新しい生命も大事にして欲しい。 そんな想いであたしは話を続けた。
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