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4月②
会いたい時に会えなくても、週末に会えるなら平気。
メッセージも、電話のやり取りも今までのように頻繁には出来ないだろうけど、全く出来ないわけではない。
だから、全然大丈夫。
──なんて、思っていたけれど。
「金沢、もう10回目。」
「え…?」
「だから、その溜め息10回目。隣でこうも頻回に溜め息つかれるとさすがに気になるんだけど。」
「すみません…。」
時刻は8時50分。
就業開始時刻からまだ20分しか経っていないにも関わらず、あたしはその短時間に溜め息ばかりついていたようで、隣の席にいる紗季さんからクレームがきた。
確かに紗季さんの言う通りだと思う。
無意識とはいえ、隣で溜め息ばかりつかれたら誰だって気になる。
だけど。溜め息つきたくなるんだからしょうがない。
「溜め息の原因は、もしかして末永郁哉?」
呆れ顔でこちらを見る紗季さんの問いに、あたしはコクリと首を縦に振る。
そう。この溜め息の原因は、全部郁哉のせい。
「郁哉、一昨日から消防学校行ってるじゃないですか。」
「うん。」
「メッセージ送るって言ってたわりに、メッセージ送ってもほとんど返事こなくて。」
「仕方ないんじゃない?遊びに行ってるんじゃないんだし。」
「それはわかってます…。」
慣れない生活に訓練と勉強で大変なのも、疲れてるのもわかる。
わかっているんだけど、ちょっと前まで毎日頻回にメッセージのやり取りをしていたから、急にその回数が激減したら調子が狂う。
それに、電話するって言ってたのに、電話は全く掛かってこない。
疲れてそれどころじゃないのかもしれないけど、声が聞けないのも結構打撃を受けていた。
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