4月⑨

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「あ、そうそう。郁哉にまだ言ってなかったけど。」 「うん。」 「常盤くん、うちの自動車学校採用なってね。」 「……、」 「来週月曜から来ることなったんだ。」 「……、」 「…郁哉、聞いてる?」 「聞いてるよ。常盤さんの話でしょ。」 「うん…。そう…。」 顔を上げて郁哉の反応を窺えば、その顔は明らかにおもしろくないと言わんばかりの表情で。 郁哉はもともと常盤くんのことを気に入ってないから、予想通りの反応ではあるけど。 「俺は週末しか樹理亜さんに会えないのに、あの人は毎日樹理亜さんに会えるんだね。なんか、すげー悔しい。」 「や…、常盤くん仕事しに来るわけだし。」 「俺、あの人ホントやなんだよ。樹理亜さんに近付いて欲しくなくて。」 「だから、仕事で…。」 「そんなの、分かってるよ。分かってるけど、おもしろくない。」 郁哉は、普段人のことを悪く言わないし、聞き分けのないこともほとんど言わない。 なのに、常盤くんが関わると一変する。 これはかなり毛嫌いしてるっぽい。 「…大丈夫だよ。あたし、常盤くんのことなんとも思ってないし。」 「樹理亜さんはそう思ってても、あっちはそうは思ってないからね?危機感持ってよ?」 「はいはい。」 「マジで心配なんだけど。」 深い溜め息をつきながら、あたしの頭を胸元に引き寄せる郁哉。 多分、常盤くんに嫉妬してるんだと思うんだけど、そういうの、実は嬉しかったりして。
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