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「あ、そうそう。郁哉にまだ言ってなかったけど。」
「うん。」
「常盤くん、うちの自動車学校採用なってね。」
「……、」
「来週月曜から来ることなったんだ。」
「……、」
「…郁哉、聞いてる?」
「聞いてるよ。常盤さんの話でしょ。」
「うん…。そう…。」
顔を上げて郁哉の反応を窺えば、その顔は明らかにおもしろくないと言わんばかりの表情で。
郁哉はもともと常盤くんのことを気に入ってないから、予想通りの反応ではあるけど。
「俺は週末しか樹理亜さんに会えないのに、あの人は毎日樹理亜さんに会えるんだね。なんか、すげー悔しい。」
「や…、常盤くん仕事しに来るわけだし。」
「俺、あの人ホントやなんだよ。樹理亜さんに近付いて欲しくなくて。」
「だから、仕事で…。」
「そんなの、分かってるよ。分かってるけど、おもしろくない。」
郁哉は、普段人のことを悪く言わないし、聞き分けのないこともほとんど言わない。
なのに、常盤くんが関わると一変する。
これはかなり毛嫌いしてるっぽい。
「…大丈夫だよ。あたし、常盤くんのことなんとも思ってないし。」
「樹理亜さんはそう思ってても、あっちはそうは思ってないからね?危機感持ってよ?」
「はいはい。」
「マジで心配なんだけど。」
深い溜め息をつきながら、あたしの頭を胸元に引き寄せる郁哉。
多分、常盤くんに嫉妬してるんだと思うんだけど、そういうの、実は嬉しかったりして。
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