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4月⑩
「常盤流星です。今日からよろしくお願いします。」
翌週の月曜日。
今日は常盤くんの初出勤日。
始業開始前に校長に紹介された常盤くんは、爽やかな笑顔で挨拶をした。
緩くウェーブのかかったヘアスタイルは短くカットされ、先週会った姿とはまたガラリと印象が変わり、とても爽やかなイメージだ。
どちらにしても、常盤くんは元々ビジュアルが良いから、今のヘアスタイルもよく似合う。
きっと今年入校する女子高生の人気を独占するに違いない。
「指導の担当のメインは矢野くんにやってもらうから、よろしく頼むよ。」
校長にそう言われた矢野さんは、「わかりました」と軽く頭を下げた。
なんとなく矢野さんが指導担当すると思っていた。
矢野さんより上のベテラン組のおじさん指導員たちは、若い子の指導なんて面倒だとか言ったに違いない。そうなると、若くて中堅の矢野さんあたりが適任だと校長は判断したのだと思う。
さっそく矢野さんにデスクに案内され、何やらいろいろ説明を受けている常盤くんを横目に、あたしも持ち場の受付カウンターへ戻る。
「相変わらずのイケメンくんね、彼。」
先に席に戻った紗季さんが、常盤くんの姿を眺めながら呟く。
「ですね。矢野さんより人気出ちゃうかも。」
冗談混じりでそんな返事をしたら、
「あたしにはその方が好都合。今より人気出て女子高生と浮気なんかされたらたまらないわ。」
「それもそうですね。」
矢野さんに対しては意外とドライなのかと思いきや、実は矢野さんに寄ってくる女子高生を目の敵にしてたのね。
紗季さんの本音が垣間見えてなんだか嬉しくなり、思わず笑ってしまった。
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