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「だいたい、まだ3日でしょ?遠距離恋愛じゃあるまいし、週末には会えるんだからそんな溜め息つく必要ないじゃないの。」
「そう、ですけど…。」
「金沢のそれは贅沢すぎる悩みだし、ただの惚気にしか聞こえないわ。とにかく。溜め息禁止。」
「…はい…。すみません…。」
紗季さんに一喝され、あっという間にこの話は終了。
贅沢過ぎる悩み…なんだろうな、やっぱり。
実際、ずっとこの状況が続くわけじゃないし、遠距離恋愛しているわけでもない。
週末には帰って来るから会おうと思えば会える。
そう考えたら、たいしたことない。
だけど、やっぱりあたしの中では完全に郁哉不足だ。
自分がこんなに郁哉に依存しているなんて思わなかったし、こんなにさみしいなんて思いもしなかった。
「紗季さんはいいですね。」
「何が?」
「毎日会えるじゃないですか。彼氏と。」
「あー…、いいか悪いかはわかんないけどね。」
紗季さんはパソコンのディスプレイを眺めながら、首を傾げて苦笑いした。
紗季さんの彼氏は、ここの自動車学校の指導員の矢野さん。
仕事に来たら無条件で毎日会えるから、ある意味羨ましい。
「あたし的には、金沢と末永くんぐらいの距離感がちょうどいいと思うけど?」
「そう、かなぁ…。」
「そうよ。」
毎日会える分、喧嘩した時とか距離を置きたくても顔を合わせないといけないから大変かな?
あとは、周りにバレないようにするのも大変そう。
でも、それはそれで燃えるかも?
なんて、あれこれ考えていた矢先。
「おい。お前ら少しうるせぇぞ。」
背後から聞こえてきた声に、あたしと紗季さんは同時に振り返る。
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