4月⑩

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「否定しないってことは、正解?」 「違います。」 「うそ〜じゃあ、首元見せて。」 「え!?それはやです。」 「なんでもないならいいでしょ。」 「だめですって!」 紗季さんはあたしの隣に椅子を移動させて、首元に手を伸ばしてきたものだから、あたしは慌ててその手を阻止する。 けれど、その抵抗も虚しくあっという間に髪を掻き分けられ、隠していた場所が露わになった。 「あー、これは…髪下ろさないとまずいやつね。」 マジマジとその場所を見た紗季さんは、さっと髪を元に戻す。 「かなり濃いし。これしばらく消えないんじゃない?」 「ですよね…。」 あたしも後から鏡でよくよく見たけど、かなり目立つし、濃い。しばらく髪を下ろすか、ハイネックの服でも着なければ隠せない。 「金沢のこと好きで好きで仕方ないって感じ?やっぱ、末永くんそういうとこ若いよね〜」 「もう恥ずかしすぎる…。」 「いいじゃないの。ラブラブでなにより。」 「よくないです…。こっちは隠すの必死だし…。」 「せっかく付けたキスマも、肝心の常盤くんの目に入らないんじゃ意味ないわね。」 ケラケラ笑いながら紗季さんは自分の持ち場に戻る。
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