4月⑪

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4月⑪

「お疲れ。」 「常盤くん、お疲れ様。」 休憩室でお昼ご飯を食べ終え、スマホを眺めていると常盤くんがコンビニ袋を片手にあたしの向かいの席にやって来た。 「ここ、いい?」 「うん。」 あたしの返事を聞いた後、向かいの席に腰を下ろした常盤くんはコンビニ袋からペットボトルのお茶とカツ丼を取り出す。 「常盤くん、仕事どう?続けられそう?」 常盤くんがうちの自動車学校に来てから今日で4日目。 常盤くんとは時々会話はあるけど、元々そんなに仲が良いわけではないし、話す内容もたかが知れている。とはいえ、向かい同士で座ってる以上、何か話さないと微妙かなと思って、話しかけてみる。 「あぁ。覚えること多いけど、楽しいよ。みんな良くしてくれるし、矢野さんの指導もわかりやすいし。」 「そっか。よかった。」 常盤くんの持ち前のコミュ力の高さと要領の良さは、高校時代と変わらずここでも発揮されているようで矢野さんはもちろん、他の指導員達ともあっという間に打ち解けていた。 矢野さん曰く、常盤くんは教えたこともすぐ覚えるし、自分なりに解釈して応用もできて、全く手がかからないのだとか。 予定より早く独り立ちさせることが出来そうだと、今から嬉しそうに語っていた。 その話通り、常盤くん自身も好感触だと感じているっぽい。 夏になると大学生の受講者が増えて忙しくなるから、常盤くんはきっと戦力になってくれるに違いない。
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