4月⑪

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そんなあたしの姿を眺めながらカツ丼を口に運んでいた常盤くんは、手を止めてふっと笑った。 「金沢って、すげーかわいい反応すんのな。」 「え?」 「なんか、高校時代そういう顔見たことなかったから意外だし、新鮮。」 「常盤くん、揶揄うのホントやめてくれない?」 「そんなんじゃないって。かわいいって褒めてんだけど。」 「そう、なの?」 「金沢フリーだったら俺、絶対彼氏に立候補してたわ。そんぐらい俺的にはかわいいって思ってる。」 「…っ、」 常盤くんがどこまで本気で言ってるのかは分からないけど、そんなふうに言われたら誰でも動揺するし、ドキッとするだろう。 いやいや。勘違いしてはいけない。 常盤くんはモテ男子だし、口上手いから社交辞令に決まってる。 あたしの反応見ておもしろがってるだけかもしれない。 「あ…、あたし…そろそろ休憩終わりだから行くね!」 あたしは飲み物やスマホをランチバッグに入れて立ち上がる。 真に受けちゃいけないと思いつつも、なんだか顔が火照っていて、それを常盤くんに悟られないよう逃げらみたいに休憩室を去った。 実際、休憩時間が終わりなのは本当で、紗季さんと交代する時間だったからちょうどよかった。
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