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「え…っ、それって、出血してるってことですか!?」
「…うん…、多分…。」
「妊娠中に出血って…、」
──まさか、流産?
妊娠は未経験だし、知識もそんなにないけれど妊娠初期で出血といったら浮かぶのはそれしかなくて。
「どうしよう…。金沢、どうしたらいい?」
「どうしたらって…、」
「赤ちゃん、このまま死んじゃうのかな!?」
「や、まだそれはわかんないじゃないですか。」
「だって、出血してるし…もしかしたらこのまま…、」
「紗季さん、まず落ち着いて。とりあえず、病院行きましょ。」
「通ってる病院、今日休診日なの…。」
「え…、じゃあ、他の病院とか…、」
妊娠の知識もないうえに、病院も知らないし、こういう時紗季さんになんて言ったらいいのかもわからないし。
矢野さん呼んできたらいいかな。
あたしの肩に顔を埋める紗季さんの背中をさすりながらあれこれ考えるけど、ちっとも案は浮かばない。
あたしまでも泣きそうになってきていたちょうどその時。
「金沢。」
背後から聞き慣れた声が聞こえて振り返れば、そこには常盤くんが立っていた。
「常盤くん…。」
「ごめん。聞くつもりなかったんだけど、トイレから出る時ちょっと話聞こえて。」
「あ…うん…。」
「門間さん、どこの病院行ってんの?」
「え?」
「門間さんが通ってる病院。」
「あ、あぁ…。確か、浅倉産婦人科クリニックでしたよね?」
以前、紗季さんから聞いていた病院名を答えると、紗季さんが頷いて常盤くんの方を見て「浅倉産婦人科クリニックに通ってる」と答えた。
すると、常盤くんは目を見開いてふっと笑った。
「門間さん、ラッキーですね。」
そして突然常盤くんがそんなことを言うから、思わず紗季さんと顔を見合わせてしまった。
「浅倉産婦人科クリニックは、姉夫婦がやってる病院です。」
──驚いた。
そんな偶然あるんだ。
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