4月⑪

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「姉夫婦って…。え、じゃあ、浅倉産婦人科クリニックの浅倉彩芽先生って、常盤くんのお姉さん?」 クリニックのことは、通院してる紗季さんがいちばんよくわかっている。紗季さんが抱いた疑問を常盤くんに尋ねた。 「そうです。なんなら、俺から姉に直接連絡しますよ。」 そう言って常盤くんは話を進めて紗季さんから生年月日と状態を聞き、早速スマホをスーツのポケットから取り出してお姉さんに連絡を取ってくれた。 浅倉産婦人科クリニックの院長は、常盤くんのお姉さんの旦那さん…つまり常盤くんの義理のお兄さんであり、そして常盤くんのお姉さんもまた産婦人科医なのだそう。 聞けば紗季さんは、常盤くんのお姉さんである浅倉彩芽先生にいつも診てもらっているのだという。 「門間さん。姉が診てくれるみたいなんで、すぐ病院向かってください。」 廊下のベンチに座り、通話が終わるのを待っていると常盤くんがこちらに戻ってきて紗季さんにそう伝える。 「紗季さん、仕事はあたし引き受けるので行ってきてください。」 「うん。常盤くんも金沢もありがとう。」 そうだ。矢野さんに状況説明しないと。 なんて思った矢先。 タイミングよく喫煙所から戻って来たと思われる矢野さんがこちらにやって来た。 「お前ら、3人集まってどうした?」 事情を知らない矢野さんは、あたし達3人を見て不思議そうな顔で尋ねる。 「矢野さん!ちょうどよかった。紗季さん、出血してこれから病院行くところなんです。」 「は?」 「とにかく赤ちゃん危険かもしれないので早退するってことですよ。」 「え、マジかよ!?つか、紗季大丈夫なのか!?」 急に焦り出した矢野さんは、紗季さんの両腕を掴み体調を確認する。 その急な変わり様に紗季さんは戸惑いながらも、「痛みはないから大丈夫」と、答えた。
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