4月⑪

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「病院まで送ってく。」 紗季さんの手を引いてすぐ病院へ行こうとする矢野さんは、かなり動揺している気がする。 「隼人、仕事…、」 「仕事どころじゃねぇよ。こっちの方が大事だし。」 「でも…、」 「いいから。校長に話しにいくぞ。金沢、紗季の仕事任せる。」 「あ、はい…。」 「常盤のことは校長から指示もらってくるから。」 「わかりました。」 矢野さんはあたしと常盤くんにそれぞれ指示出しをして紗季さんの手を引く。 「金沢、ごめんね。あとお願い。」 申し訳なさそうにそう言った紗季さんに「大丈夫です。気を付けて行ってきて下さい」と返すと頷き、矢野さんと紗季さんは校長のところへ向かった。   「門間さんの相手って、矢野さんだったんだ。」 2人を見送った後。歩きながらそう言った常盤くん。 「うん。」 一応、社内恋愛禁止という規則のようなものはないけれど、ここでは2人が付き合っていることは公にしていない。 まさか入職して間も無い常盤くんに知られるとは思わなかったけど、状況が状況だし仕方がない。 「矢野さんと門間さんって、これから結婚する予定とか?」 「ううん…。」 「え、じゃあ子供は…?」 「……、」 これ以上はあたしの口から言うのはどうかなとか思ったら、答えられなくて。 それを察したのか常盤くんは、「いろいろ大変なんだな」と、呟きそれ以上は追求してこなかった。
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