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【なにしてる?】
【今電話してもいい?】
タップして開いた瞬間に次のメッセージも届く。
その送り主は郁哉だ。
あたしは返信を送らず、すぐ通話画面に切り替えて郁哉に電話した。
『樹理亜さんはやっ!』
2、3秒もしないうちに応答した郁哉。
その速さに思わず顔が緩む。
「郁哉も十分早いけど。」
『返信くるかと思ったらイキナリ通話画面なったからね。』
「そうだよね。」
──だって、郁哉の声早く聞きたかったんだもん。
なんて、照れくさいから郁哉には言わないけど。
『なにしてた?』
「ご飯食べ終わってテレビ観てた。」
『そっか。』
「郁哉は今、自由時間?」
『うん。そう。』
「今日も大変だった?」
『うーん…まぁ、ね。でも、学校のみんなと親しくなったし、なんとかなってるよ。』
「そっか。」
相変わらず郁哉は弱音を吐かない。
本当になんとかなってるのか、それとも敢えてしんどいことをあたしには言わないだけなのか。
しんどい時は言ってね…と、前に話してるから郁哉の今の言葉を信じるしかないのかな。
「…あのね、今日仕事中紗季さん出血して早退したんだけど。」
『門間さんが出血って、え!?どういうこと!?』
「赤ちゃん…危険かもしれないからって急いで病院行って。」
『うん。それで?』
「赤ちゃんも紗季さんも無事だったみたい。」
『無事だったんだ。よかった。樹理亜さんのその話ビビるよ。』
「だよね。それでね、明日中絶手術するのやめて、赤ちゃん産むことに決めたって、連絡きた。」
『マジ!?』
「うん。矢野さんと結婚して赤ちゃん育てるんだって。」
『え!?そっかぁ…そうだったのかぁ…。』
「うん…。」
『…幸せになるための選択が変わったんだね。矢野さんと門間さんならどんな選択をしても不幸にはならないよ。想い合ってるしね。』
「うん…。」
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