4月⑬

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「あ、郁哉、10円ありがとう。」 「全然。ほんの気持ちですが。」 「ふふ。ありがとうございます。」    突然現れてさりげなく不足分のお金自販機に入れたりするあたり、郁哉らしい。 そういうとこ、ほんと好き。 「…やっぱいいね。」 「なにが?」 「制服姿。好き。かわいい。」 「…なっ…、」 「樹理亜さんのその制服姿、久々に見たかったからここ来たのもあるんだよね。」 「来てよかった」と、目を細めながらあたしの髪を撫でる。 サラリと甘い言葉を言われ、更に髪なんて撫でてくるからそれだけで胸の鼓動が速くなるし、じわじわと身体の奥が熱くなってくる。   「髪、下ろして仕事してんの?」 「う、ん…。だって…郁哉が…首にキスマ…、」 「あ、そうだったね。」 郁哉はスッと首筋に指先で触れ、キスマークがあるあたりを確認するかのように髪を寄せる。 「…っ…、」 その微妙なタッチにぴくりと身体が反応する。 そして、あたしの反応に気付いた郁哉は、ふっと笑った。 さすがにいつまでも自販機前でこんなことしてたら人目につく。 幸い誰にも見られてないけど、そのうち誰かに見られるだろう。 「郁哉…、手…、それに…、このままここにいるってのは…、」 「あー、だよね。ごめん。」    郁哉はようやく触れていた手を引っ込めた。
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