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勢いのまま語り続けていた僕は、驚きのあまり空気まで一緒に飲み込んだ。喉に空気が通って、違和感が半端ない。
「私のデザインじゃない。あなたのデザインを作らなくてどうするの」
「え?」
「デザイナーを目指すからには、自分のデザインを探求しないと損よ。デザインを作ることが、デザイナーの醍醐味なんだから」
「あの……」
「採用します」
「へ?」
あまりの展開の速さに、一瞬、何を言われているのか分からなかった。
立て続けに「来月からうちに来れる?」と問われて、ようやく理解できた。
「…………僕なんかで、いいんですか?」
「むしろ君がいいの」
「僕が、ですか?」
「生まれ持った色への感覚、自己評価の低さ、勢いで動ける行動力。そして何より、色への情熱的な愛……育てがいがあるわ」
朝日奈さんが目を細めた。品定めをする、野性的な眼差しだ。
獰猛な一面を垣間見たが、それ以上に、自分がこの人に期待されているのだと分かって――喜びが全身を突き上げた。
「――来月から、よろしくお願いします!!」
「えぇ、こちらこそ」
朝日奈さんは、新しいことをする時にお気に入りの服を着るのだという。
一回目に見た時は、初めての一人旅。
二回目に見た時は、初めての番組出演。
今着ている服も、僕の愛する【カナリーイエローのワンピース】だった。
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