がらんとなった自習室に

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がらんとなった自習室に

「よっ」 誰かの声が聞こえた。(ん?)と思って周りを見渡すと、誰かしらない人がいた。 「ああ、正太ね。」 ぼくは頷いた。 自習室の名簿に「岩本(いわもと)涼太(りょうた)」とあった。ぼくはその横に「13:00」と書いて、自習室を出ていったのだった。 そのときだった。突然目の前が真っ暗になって、何が何なのかわからなくなった。偶然にも懐中電灯を持っていたので、塾の中全てを照らしてみた。ぼくは個別指導室に入った。次の瞬間、 「ぅ゙あ゙ぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁっ」 とものすごい勢いの先生たちが、 「涼太ぁー宿題をしろぉーーー」 と、ゆらゆら倒れながらこちらに近づいてくる。汗がだらだら流れ、止まらない。 しかも、さっきの正太でさえ、 「涼太ぁぁぁぁぁ友達じゃないぞおぉぉぉ」 と言い、肩を掴んできた。塾の先生も、友達も、大人も、赤ちゃんも、うちで飼ってるメダカも、動物も、植物も、おばけになって、ぼくのところへ近づいてくる。ぼくは 「何なの!?」 と言い、 「うわあああああああああああああぁっっ!!!」 と泣いた。 目を開けると、普通の塾だった。塾の先生にも何も無い。正太も、何もしていない。何もかもが、普通に戻った。 トレーを見てみたら、こんな紙があったーー 〝あなたの水筒に怖薬(こわぐすり)を入れて怖がらせてしまいました。すみません。しかし、あなたは宿題をできていないのですね。早く済ませてください!怒りましたが、それだけです〟 (なーんだ。) と、ぼくは思った。 「じゃあな」 正太が軽快な気持ちで階段を降りていったことが僕の心に残った。 注 ※怖薬:書いてあるとおり、飲んだ人を怖がらせる薬。 【詳細】 書いた時期:小4のころ 修正:2024.5.23 中3
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