ミーヤ!パニック!パニック!

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ミーヤ!パニック!パニック!

トムのいえでは、 いっぴきのねこを かっています。  なまえは ミーヤ、 2さいの メスねこです。 そのひは、 なんだか かぞくのみんなが   あさから バタバタしていました。 1かいの キッチンから ママの おおきな こえが ひびきます。 「トム、 はやく おきて! がっこうに ちこくするわっ」 その こえの おおきさに、2かいの こどもべやで くっすり ねむっていたトムは びっくり。 「なに?!」 あわてて とびおきました。 トムが かいだんを かけおりて キッチンにむかうと、 ママが パジャマすがたのまま トムの おべんとうを つめています。 「もう、8じよ!」 とっさに、 トムの めが とびだしました。 「ひゃー、 いそがなくちゃっ」 どうやら、 めざましどけいを かけわすれていたようです。 あさねぼうしたにちがいありません。 ひのあたる まどぎわに すわり、 ゆうがに それを ながめていたミーヤは めをほそめて ははーんと なっとくのようす。 みじかい ぎんいろのけが ひのひかりにあたって キラキラと かがやいています。 パパはというと、 ワイシャツのすそが ズボンから はみだしたままで 「いってきますっ」 おおあわてで かいしゃに でかけていきました。 じゅうぶんに ひなたぼっこをすませ、 けづくろいをはじめていたミーヤは ぼそりと ひとこと。 「んにゃお」 (だらしのないパパだな) そんなことはさておき、 ミーヤにとって おたのしみの じかんがやってきました。 ミーヤは、 しっぽを ピーンとたてて おきまりのばしょへ はずむように むかっていきます。 「なおなおなぁーん。 にゃお、 にゃにゃん」 (ちゃららーん。 お・ま・た・せ、 わたしの  あさごはーん) こころのこえが くちから もれてしまいます。 そのころ、 ママは じまんの ヘアスタイルが きまらないまま いえのなかを かけずりまわり、 ダイニングでは トムが くちいっぱいに シリアルを かきこむ うんどうかいの まっさいちゅう。 いえじゅうに いろんなおとが とびかいます。 ダッダッダッ  ッダッダッダ   バサッ ガタン ガチャガチャン パリーン…… (あ、 だれかが さらを わったな……) ミーヤは、 かぞくが とっちらかしたしょうがいぶつを ひょい ひょいと よゆうで よけながら、 ゴールのあるキッチンへ まっしぐら。 「!!」 ミーヤは たどりついたさきで がくぜんと しました。 「に゛ゃ゛―ん゛!」 あまりのおどろきように ねことして ただしく なけません。 なぜなら、 なかったのです…… そこに あるべきはずの おたからが。 いままでこんなこと、 いちどもありませんでした。 こみあげてくる いかりを おさえ、 もういちど なきました。 「フミャァーー」 しかし、 だれも ミーヤのこえに きづきません。 ワナワナワナワナワナワナワナワナワナワ…… ミーヤのからだが こきざみに ふるえてきました。 「うにゃにゃ」 (…よーし。 こうなったら おくのてを だすしかない) すーっと はなから いきを すいこむと、 ミーヤは せすじをただし 「ゴアーーン! ゴアーーン! ゴアーーン!」 ん? どうやら 「ゴハン」と ないているようです。 ガチャッ!  とつぜん、 げんかんのドアが ひらいたと おもったら、 バタン! ブルルルルーン。 くるまの エンジンのおとが ひびき、 ついには、 ママも トムも いえを とびだして  いってしまいました。 ガーン……。 なんということでしょう。 キッチンには とりのこされた ねこが ポツン。 うえを むいていた しっぽは たれさがりました。 ミーヤは とうとう こころぼそくなり、 「……フミヤァ」 と、 よわよわしく ひとなき。  シーン。 もちろん だれからも へんじは ありません。 せいいっぱい のばした おれみみも、 ペタンと もとどおり。 (ど、 ど、 ど、 どうしよう) たちつくしたままの ミーヤでしたが、 まわりをみわたしてみると… シリアルのはこが! そのはこは、ミーヤにとって きぼうのひかりにみえました。 ねらいを さだめて、 「ンニャッ!」 タタタッ。 ダイニングテーブルのうえに ピョンと とびのると、 たおれている はこに そーっと ちかづきます。  そして まわりに こぼれている いくつかの シリアルを はっけん。 クンクン。 しっかり においを かくにんします。 ツンツン。 しっかり さわって かくにんします。 ペロリと ひとなめ。 「ニャオワ!」 (たべられるかも!) はこに まえあしを つっこみ、 じょうずに シリアルを かきだすと、 われをわすれて たべはじめました。 ガサガサガサガサ  カリカリカリカリ ガサガサガサガサ  カリカリカリカリ ガサガサガサガサ  カリカリカリカリ 「?!」 とまりました。 むちゅうで ほおばっていた ミーヤの うごきが ぴたりと。 ミーヤのかおが ゆっくり ゆがみます。 「ブミャー! ブミャー!」 「オオッッッエエエエー!」 「ペッペッペッ!」 いっきに はきだしました。 ミーヤ! パニック! パニック! ここからは、 あわてふためく ねこの ようすを ごらんください。 まずは、 テーブルのうえの かびんを パンチ。  すると、 ゆかに ガッシャーン。  たくさんの ひまわりが ちらばり、 みずが  ビチャビチャビチャ。 「シャー!」 みずがきらいな ねこは ソファーに大ジャンプ。  そして ひっかきはじめました。 うもうが とびだして ちゅうを まいます ヒラヒラヒラ。 まるで ゆきげしきのよう。 「ニャーゴ!」 まだまだ つづきます。 カーテンに とびうつり ぶらんぶらん。 その ひょうしに カーテンが ひきさかれて ビリビリビリ。 「クワッ!」 バランスをくずして、 ほんだなに しがみつこうと もがく ミーヤ。 まえあしと うしろあしで ほんを ぜんぶ かきだしています。 みごとに からっぽ。 おしまいには、 ほんだなまで たおれてしまいました。 「フー!!!」  ミーヤは イスを たおし、 まどに ぶつかり、 ねこの ぬいぐるに おどろいて、 いえじゅうを ころげまわったのち…… ようやく、 シリアルが ねこの くちには あわないことに きがつきました。 ブルルルーン。 ママが トムを しょうがっこうまで おくりとどけて かえってきました。 なんとか まにあった ごきげんな ママは はなうたを うたいながら げんかんの カギを あけています。 ガチャ… 「ぎゃぁーーーーーー!!!!!」 ママ! パニック! パニック! おわり
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