大人になれない私たちは

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ただ、私は彼に対して特に羨望や嫌悪感をいだくともなく、女子にベタベタくっつかれている彼を眺めて、またやってるなあ、と、まるで水の中で息を止めるように当たり前の感情を抱いていた。 けれどもそれらは私とは全く違う世界にいたからこそ、そう思えたのだ。 グルメ番組を見て、あの料理美味しそうだな、と思うあの感覚に似ている。 食べたいけれど、食べたいな、と思うだけで十分。 違う世界にいるからこそ、好きとか嫌いとか簡単な言葉じゃない。どう言い表せばいいのか。 ていうか。 「(私じゃなくても良いはずなのに……)」 雨宮くんの意図が分からない。 次の休日。雨宮くんは宣言通り私の家にやってきた。 「(大丈夫。スタイルも良くないし、可愛くもないし、服脱いだらやっぱやめた!ってなるかもしれない!!)」 悲しくなるような自信を持って雨宮くんを迎える。 「…………は?」 穴があったら入りたい、そんな気持ちに陥ったのは、家の玄関の前で、目をまん丸に開く雨宮くんと出会ったその時だった。
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