724人が本棚に入れています
本棚に追加
ただ、私は彼に対して特に羨望や嫌悪感をいだくともなく、女子にベタベタくっつかれている彼を眺めて、またやってるなあ、と、まるで水の中で息を止めるように当たり前の感情を抱いていた。
けれどもそれらは私とは全く違う世界にいたからこそ、そう思えたのだ。
グルメ番組を見て、あの料理美味しそうだな、と思うあの感覚に似ている。
食べたいけれど、食べたいな、と思うだけで十分。
違う世界にいるからこそ、好きとか嫌いとか簡単な言葉じゃない。どう言い表せばいいのか。
ていうか。
「(私じゃなくても良いはずなのに……)」
雨宮くんの意図が分からない。
次の休日。雨宮くんは宣言通り私の家にやってきた。
「(大丈夫。スタイルも良くないし、可愛くもないし、服脱いだらやっぱやめた!ってなるかもしれない!!)」
悲しくなるような自信を持って雨宮くんを迎える。
「…………は?」
穴があったら入りたい、そんな気持ちに陥ったのは、家の玄関の前で、目をまん丸に開く雨宮くんと出会ったその時だった。
最初のコメントを投稿しよう!